
「う〜ん、どうしても気になる」
「あら、どうしたの?」
「卵の殻がね。ここ最近、僕の口の中でジャリジャリしてるんだよね。ずっと違和感がある。」
「そうなんだ。私が取ってあげようか?」
「じゃあ、お願いしようかな」
僕は口を開いた。
口の中には今までの人生で食べたもの全てがぐしゃぐしゃになっていた。
美味しいもの、美味しくないもの、いい匂いのもの、異臭を放つもの、全部が咀嚼されて酷く醜い姿になっていた。
君はそれを見て微笑んで、僕の醜い口に口づけをした。
ぐしゃぐしゃの口の中で舌を這わせて卵の殻を一生懸命探した。
僕は一人で勝手に気持ちよくなっていた。
「ん、あった。見てこれ!」
そうやってぐしゃぐしゃに汚れた口元で笑顔を見せながら、舌の上にある卵の殻を見せた。
その殻は、なんだか懐かしい形をしていた。