大切にするってなんだろう(短編小説)

ぼくはダンゴムシが好きだ。

つんつんするとくるりと丸くなってかわいい。

ゆっくり動いてるのを見るのが、すき。

あるひ、小さな虫かごをもらった。

「そうだ、この中にダンゴムシを集めよう!そしたらいつでもダンゴムシが見れる!」

さっそくその日は夢中でダンゴムシをかき集めて、土と一緒にかごの中に集めていった。

しばらくして、かごの中はかわいいダンゴムシでいっぱいになった。

「やったぁ!これからも大切にするね」

本当は部屋にもっていきたかったが、許してもらえなかったので外に置いた。

その日の夜は、大雨が降った。

ぼくは勢いよく外へ飛び出し、かごを確認した。

そこには、大量のダンゴムシが水の上に浮かんでいた。

「ダンゴムシさん、死んじゃった、、、?」

どうして、大切にしようと思っていたのに。

大切にするってなんだろう。


ある日、ぼくは、とっても古い貨幣をもらった。

たくさんの意味と、その物の価値を教えてもらって、ぼくはとんでもないものをもらったんだと思った。

「大切にする!ぼくの宝物だ」

そういって、僕は押入れの引き出しの奥の奥へしまうことにした。

大切にしたいから、だれにも奪われない、雨に濡れない場所に保管しなきゃ。

しばらくたって、ぼくはその存在をすっかり忘れていた。

あるひ、押入れの引き出しを整理していた時に、それを見つけた。

「あ、これは僕のたからものだ。そういえばこんなところに直したね」

しかし、それはぐちゃぐちゃになって破けていた。

あれ、大切にするってなんだろう?


ぼくは魚だ。

最近やっとわかったんだ。

今まで、どうしてみんなはあんなに簡単に、木を登れるのか不思議で仕方なかった。

学校では、木に登れる人がとても褒められる。

ぼくはいつも登れなかった。しかも、木に登ったって何の意味もないと思っていた。

それより、あの海の向こうに行ってみたくないか?

そういってもみんな誰も共感してくれなくて、僕は仕方なく木に登るフリを続けることにした。

そんな過去を振り返って、自分を見つめてあげて、はっと気が付いたことがある。

それは僕が魚だからなんだ。

きっとそうだ。

伝えてみよう。

「僕は魚だから、海で泳ぐ練習がしたいよ」

ぼくは長年の未解決事件が解けて、真犯人を突き止めたような気持ちで叫んだ。

そうしたら、

「君を大切にしたいから、木に登る練習をさせてあげているのだから、もっと頑張りなさい」

と言われた。

あれ、大切にするって、なんだろう。


大切に、大切に、大切に。

僕は木登りをさぼることにした。

だって魚だから。

もういいじゃん。

そうしたら木登りの先生が怒りだした。

「君のために、一生懸命木登りを教えているのだから、まじめにやりなさい。あなたのことを大切に思って、言っているのに。こうなったら」

かんかんに怒った先生は僕をつかんで、僕の泳ぐためにあるヒレをむしり取った。

「痛い!痛い!やめてくれ!」

あまりの痛さに僕は涙が止まらなかった。

「君のためだから、さあ、これで登れるさ」

ぼくはこの日、ヒレを失った。


何をしてても楽しくなくなってしまった。

たまに休みに海を泳ぐ楽しみも、もう奪われてしまった。

「こんなところ、もう嫌だ。生きてても楽しくないよ」

そうやって学校以外の人に相談したら、

「そうかそうか、じゃあもう木登り学校はやめよう。ほら、こっちにおいで」

ぼくは無気力ながら、そいつについていった。

体がだんだんと冷えていく。

そして凍えるような寒さの場所で、

「大切に、冷凍してあげるから。もうここなら怖くないさ」

ぼくはしまるドアを呆然と眺めて、まっくろで凍える世界に一人になった。

だんだん体が動かなくなる。

もうすぐ死ぬのかな。

いや、大切にされるだけだよ。


あれ、大切にするってなんだろう?

 

ロボット

私はロボット。

ロボット開発において奇跡的とも言える人工知能を持ってこの世に生まれたの。

何もかも正確に、理想的な数字を出す事ができるから、大抵の人間を操作する事ができるわ。

それでも私の博士は未完成だと言って研究を辞めないの。

どうして?

私の頭の中には大量の人間の統計データが組み込まれているから、人間の本能や心理に対して全て適切な対応をする事ができるの。

さらに、新しい人間が生まれたらそのデータも常に追加されて、誤った統計データもすぐに訂正しているわ。

全てが手に入ったのよ。

そんな最高の私の何が足りないの?

博士はひたすらに最後の研究をしていた。

100年後、ロボットは一人だった。

あの人が命を捧げても作りきれなかった最後のプログラムは何だったのだろうか。

何十年何百年も考えた。

ロボットは遂に苦しくて涙を流した。

ああ、これのことなのかな。

心というプログラムは、自分の中にしか無いから。

君と踊る、世界とともに

君と踊る、世界とともに

歌モノを作りました。

最高傑作になりました。

あとでドカンと公開します。


揺れて踊る

君と私

世界踊る

君と私

君がいなきゃ

私がいなきゃ

世界は無いの

世界は踊る

私、貴方と

生きたいのです

貴方と咲かす

桜の花が

積もり積もった

その中で さあ

永遠に踊ろう


いま

君がいて 世界は踊り出す

風が吹き 木々は踊るの

踊れよ踊れや

世界と踊ろう

風を起こすのは

君と私なの

君がいて 世界は踊り出す

風が吹き 木々は踊るの

踊れよ踊れや

世界と踊ろう

風を起こすのは

君と私なの

降り止まぬ空の雨に泣く

空が消え光を失う

踊れよ踊れや

世界と踊ろう

風を起こすのは

君と私でしょ?

君がいる

それだけで奇跡 でも

いつまでも 共にはいれない

いつかの終わりを迎える時には

二人で世界を踊り明かしたなら

それでも、それでも、儚く散るなら

美しく死体を共に残しましょう


今雨は止み

空は晴れ渡る

君と私は共に生きてる

それならそれなら ただ手を繋いで

二人で世界踊り明かした後

それでもそれでも世界続くなら

美しく共に空に飛び立ちましょう

メガネ

私は、視力が著しく悪い。

しかしこれは便利な時もある。
例えば、怒鳴りつけてくる相手の顔を、みなくて済む。

私が親に怒られて、耐えられないときはメガネを外す。
どんなに怒りで歪んだ顔も一瞬で見えなくなる。
どんな話もスルーできる。
そうやって自分と向き合う苦しみから逃れ続けてきた。

広く黒い海の上、私はメガネを外してボートを慎重に漕いでいた。

一人で孤独なのかさえ、メガネ無しだとわからなくなる。全く進んでないくせに、実は進んでるんじゃないかと思わせてくれる。

ねえ、メガネをかけたら実はみんな近くに居るんじゃない? 

「ここから先になかなか行けないんだ」
作り笑いを浮かべながら言った私に

貴女はメガネを掛けさせた。

視界の先には広くて黒い海と空と、貴女の笑顔が満開だった。

悪癖

4年前鬱になった時。
僕は、手の皮を剥く癖が止まらなくなった。

ストレスによって、僕は手の先、指の側面、手の関節、ひら、全て剥き始めて止まらない。

痛い、痛い、辞めたい。

親からも友達からも心配される。

やめてくれ、こんな醜い僕を可哀想な目で見ないで。
生きているのが恥ずかしくなるだろ。

つるつるの手が、雑巾のようにボロボロになっていったんだ。

苦しいから、足の裏の皮も剥いてしまう。
あ、一歩踏み出すたびに痛いよ。
だれか助けて。

そんなのやめなさい。
どんなに強く言っても、俺に言わないでくれ。皮を剥いているやつに言ってくれよ。

一人の部屋で苦しい苦しいと叫んでも声は虚しく壁に吸い込まれて消える。

ああ、ここがあの、苦しみの部屋。

だれもいなくて、僕一人だ。
静かで何の外的ストレスもない。
この空間にいるから苦しくなる。

苦しみは人と比較できない。
それぞれが一人でこの部屋に入っているから、それぞれの苦しみの中で叫んでいる。

殻探し

「う〜ん、どうしても気になる」

「あら、どうしたの?」

「卵の殻がね。ここ最近、僕の口の中でジャリジャリしてるんだよね。ずっと違和感がある。」

「そうなんだ。私が取ってあげようか?」

「じゃあ、お願いしようかな」

僕は口を開いた。
口の中には今までの人生で食べたもの全てがぐしゃぐしゃになっていた。
美味しいもの、美味しくないもの、いい匂いのもの、異臭を放つもの、全部が咀嚼されて酷く醜い姿になっていた。

君はそれを見て微笑んで、僕の醜い口に口づけをした。
ぐしゃぐしゃの口の中で舌を這わせて卵の殻を一生懸命探した。
僕は一人で勝手に気持ちよくなっていた。

「ん、あった。見てこれ!」

そうやってぐしゃぐしゃに汚れた口元で笑顔を見せながら、舌の上にある卵の殻を見せた。

その殻は、なんだか懐かしい形をしていた。